「凶犯」を読みました
凶犯 |
内容(「BOOK」データベースより)
中国内陸部の国有林に派遣された誇り高き傷痍軍人・李狗子。国有林監視の仕事をまっとうしようとしていた彼を待ちうけていたものは、金力の前にひれ伏す腐敗した権力と状況に流されるだけの「庶民」だった。対立は深まり、ついには衝撃的な大事件へと発展する。次々と明らかになるあまりにも残虐で戦慄すべき事件の全貌。人間・狗子はどう生きたのか。人々は何を考えたのか…。実際に起きた事件をモチーフに現代中国の社会問題を描き、その背後にひそむ人間精神の深淵をえぐる筆致は、目を見張るほどリアルで鮮烈だ。興奮と感動のるつぼに叩き込まれる現代中国の衝撃作!中国の社会派人気作家・張平、待望の日本初上陸作品。
日本でも公務員の公私混同が度々問題になっているけれど、中国では規模や深さが全く違う様だ。「まっとう」な生き方をしようとした主人公・狗子はリンチをうけた挙句、瀕死の状態でも助けてももらえず、水の1杯ももらうことができない。煙たがられる、嫌がらせをされる、というレベルをはるかに超えている。
井戸でしか水を確保できない村で、井戸の水を汲ませず、自力で見つけた湧き水には糞尿をばらまき嫌がらせをする。貧しさからくる卑屈さで権力に完全服従する村民の様子に「貧しさ」がどんなに恐ろしいかが表されている。
実話を元に、とあったけれど、本当にこんな硬い信念を貫けた人がいたのだろうか。上司や社長の不正をクビを覚悟で告発する、なんていうのとは桁の違う強さが求められただろうに。
北京ではオリンピックが華々しく行われてる、その同じ国でこの「貧しさ」が存在している、それを海外へ伝えるというだけでもこの本は大きな役割があると思う。
これも米原万理の書評より。さすが。
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